ー施工管理技士の仕事の流れを完全ガイド｜一日の動きから竣工までー

施工管理技士の役割と全体像

施工管理技士は、現場の安全・品質・工程・原価を達成するために、計画から引き渡しまでを統括する存在です。発注者や設計者、協力会社、近隣との橋渡しを担い、判断と段取りで工事の価値を高めます。
ここからは、着工前、施工中、竣工前後の三段階に分け、具体的なタスクと一日の動きを整理します。実務用語はやさしく説明するので、未経験でも全体像がつかめます。

関係者調整と安全・品質・工程の司令塔

要望と設計意図を踏まえ工程や手順を共有し、安全対策と品質基準、検査項目を明確化します。

働く現場と業種のちがい

建築、土木、設備、リニューアルで重点は変わります。土木は地盤や仮設、建築は仕上げ、設備は試運転調整が要所です。

着工前：準備段階の流れ

準備が八割と言われるほど、段取りは成果を左右します。無理のない工程と安全・品質を両立する現実的な施工計画を作り、関係者の合意を得ます。

現地調査・図面確認・見積精査

現地条件や搬入ルート、仮設を確認します。図面の不整合を洗い出し、数量根拠と見積内訳を照合します。

施工計画・工程表の作成

クリティカルパスを意識した工程表を作り、人員・重機・資材手配、検査計画を具体化します。安全衛生計画も整えます。

近隣対応・許認可・着工準備会

騒音や交通誘導の計画を説明し、窓口を明確にします。届出や許可を完了し、着工準備会で最終確認します。

施工中：日々の管理の流れ

施工段階は、安全最優先で工程・品質・原価を日々のPDCAで回します。朝の共有、昼の進捗確認、夕方の記録と翌日の段取りが基本です。

朝礼・KY活動・段取り

当日の作業範囲、危険ポイント、搬入計画、気象条件を共有します。立会検査や資材手配もここで固めます。

工程・進捗管理

出来形と出来高を数値で把握し、遅延は代替手順や人員再配置で即日是正します。ボトルネック作業は優先処理します。

品質管理・検査

配筋、寸法、仕上げサンプルなど基準に基づき確認します。是正時は原因と再発防止を記録します。

安全衛生・環境配慮

足場点検、重機周りの立入管理、熱中症対策、粉じん・騒音対策を継続します。ヒヤリハットを翌日のKYへ反映します。

原価・出来高・調達

日報と出来高でコストを週次で追跡し、在庫と納期を見直します。単価交渉や代替品で予算超過を抑えます。

記録・報告・関係者対応

写真、検査記録、議事録を整理し、発注者や設計者へ進捗を報告します。近隣からの問い合わせにも即応します。

竣工前後：引き渡しまでの流れ

終盤は、見落としゼロと不具合ゼロを目標に、検査と是正を短期間で回します。書類の網羅とデータ整備も同時に完了させます。

社内・官公庁・発注者検査

社内検査で是正を潰し、官公庁検査の書類と現地表示を整えます。発注者検査では操作説明や維持管理のポイントも共有します。

引き渡し・竣工書類

竣工図、材料証明、品質記録、試験成績、取扱説明書、保証書を整え、鍵と引渡書を交付します。データはクラウドで共有します。

アフター対応とクレーム予防

初期不具合の受付体制を整え、季節要因の点検計画を案内します。引き渡し後の対応が次案件の評価につながります。

未経験者がつまずきやすいポイントと対策

壁は、情報の粒度と優先順位づけです。工期や安全に直結するクリティカル項目から精度を高めると失敗が減ります。

伝達漏れと認識ズレ

図面や工程の変更は、書面とチャットで二重共有し、承認フローと期限を明確化します。既読と合意を記録します。

工程遅延の早期察知

出来高曲線と人員実績を可視化し、遅れは三日以内に対処します。雨天代替や夜間作業は安全と近隣影響で判断します。

図面・仕様の理解不足

手順を自分の言葉で要約し、要点をチェックリスト化します。サンプルやモックで共通認識を作ると手戻りが減ります。

キャリアアップと資格活用のコツ

資格はスタートで、評価を高めるのは成果の再現性です。日々の記録を資産化し、現場を跨いで使えるテンプレを持ちましょう。

実務記録の標準化

写真台帳、検査記録、工程表、出来高資料のひな形を整え、誰でも同品質で作れる仕組みにします。属人化を防ぎます。

ICT活用と可視化

クラウド施工管理、ドローン測量、電子黒板、モバイル図面を活用し、移動と待ち時間を削減します。意思決定が速くなります。

BIM/CIMや環境配慮の視点

三次元モデルで干渉チェックや出来形管理を行い、LCAや省エネの観点を取り入れると、発注者評価や入札競争力が向上します。